伝説の0点優勝。なのに誰もが優勝と認め、本人達やNHK関係者だけでなく観客や対戦相手までも胸をなで下ろしたという、
ある意味この年の近畿大会を救ったマシン。
テストランでは全チーム中唯一全ての動作をこなしVゴールを決め、大会本番でも唯一箱を持ったマシンをフューチャーゾーンに送り込みました。
が、そこでもまた別の伝説を作ったのでした。
アイディアはアンダースロー型カタパルトでかまぼこ型の子機をフューチャーゾーンに投げる方式。
モスグリーン色の本体は塗装したベニヤ板。木、アルミ、段ボールパネルを的確に使い分けています。
動きは、まず子機から引き延ばされたメジャーの先端を箱に引っかけて子機内に取り込みます。取り込む箱は3個。
進入禁止ゾーンの手前まで移動したら、マシン上部に2つ伸びたアームを後方に倒します。
アームの先端にはウインチ用のモータが付いており、これが自重で落ちる力もカタパルトのゴムを引っ張る力に利用しています。
ウインチを巻き取るとカタパルトのゴムが引き延ばされ、子機発射のエネルギーを充填。
そしてカタパルトを解放する事で、アンダースローで子機をフューチャーゾーンに送り込みます。
子機は衝撃吸収用のウレタンマットによるかまぼこ型をしており、起きあがりこぼしの原理で駆動輪を地につけます。
操縦ケーブル用のアンテナを立て、Vゴール付近まで移動。
箱の取り込みに使ったメジャーを更に巻き取る事で、子機の反対側から箱を出して得点。
また駆動輪とは別に設けた扁平タイヤを立てることで、箱の出口をVゴールの高さまで傾けてVゴールを狙う事が出来ます。
この年の近畿大会は東海北陸と共に最も早く開催されました。
前日のテストランでは箱の取り込もすらできないマシンが殆どで、まともな試合が出来ないことは誰の目にも明らか。
教官会議で運営側から、ルール修正(箱を取り込みで1点、マシンのフューチャーゾーン超えで3点を加点)が提案されましたが、
それは自分達がやってきたルールと違うと、学生も教官も受け入れませんでした。
このルール修正は近畿、東海北陸以降の大会では正式に適用される事となりました。(全国大会ではマシンのフューチャーゾーン超えは2点)
また、台の上の箱の並べ方をある程度の範囲で事前に調整できる(1列だけ箱の並び方向を変える、一部に隙間を空ける等)ようにもなりました。
結果、大会では誰も得点を決めることが出来ず、反則の発生により大会の平均得点がマイナスとなる異常事態。
0点の同点時は、ルールに則り使用バッテリーの電力が少ない方が勝利となりました。(省エネルギーセンター協賛)
ちゃれんじろうは箱取り込み時や、ウインチ巻き取り時のトラブルなどのためなかなかフューチャーゾーンを越えられませんでしたが、
バッテリーが小さかったため勝ち進み、準決勝でついに箱を持った子機をフューチャーゾーンに送り込む事に成功します。
しかしその時、勢い余った子機が操縦ケーブルを引っ張り、コントローラからケーブルがすっぽ抜けてしまったのでした。
(当時はリトライも無く、操縦者が入れないフューチャーゾーンに飛んでいってしまったケーブルをつなぎ直すことは出来ない)
司会のタージン曰く「彼は今飛びすぎたんです!」「これガムテープで貼っとくとかなかったんかいな」
最高の盛り上がりに最高のオチをつけつつも、マシンの性能と、本大会のルールが物理的に成立する事を観客に示し、
更には近畿大会のVTRにまともに使えるシーンを提供した功績は大きいでしょう。
そんな事もあったため、決勝でバッテリー勝利しながらも、優勝すべきマシンが優勝したと皆安心したのでした。
全国大会ではいきなり全国準優勝マシン(石川高専 TURBO)に当たり敗退。
余談ですが、石川高専 TURBOも全国大会1回戦でフューチャーゾーンに飛んだ際、
コントローラからケーブルが抜けてしまうというトラブルに見舞われていました。
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