高専ロボコン30年目。NHKはシーズン前から動画「
高専ロボコン 30年!~2017年。30年目のロボコンがはじまる。~」などで精力的にPRし、
お祝いロボットやドラマ、全国大会の生放送など様々なイベントを展開してきた。
ルールは2007年「風林火山 ロボット騎馬戦」以来10年ぶりの直接接触競技。
この手のルールは何かとトラブルが起きやすいが、競技としてはやはり面白い。シーズン終了後は各種イベントで子供達に大人気になる事は想像に難くない。
風船を割る道具には刀と秘密道具があり、刀に使用されるのはおもちゃの刀「ちゃんばらキングネオ」。
これに布ヤスリを巻き、風船を擦れば割る事が出来る。秘密道具はマシン1台に1種類で、堅い材料は禁止。
近畿大会は4週目。初めの方の地区大会ではマシン同士の風船の攻防が多かったが、次第に本陣の割り合いが増えてきた。
そして近畿大会では完全に最初から本陣をいかに早く落とすかという試合展開で、全試合本陣全割りで決着が付いた。
風船を割るのに使用する道具も、刀ではなく秘密道具が支配的。
刀だけではアイディアが画一化するため秘密道具が設定されたのだから当然の流れであり、課題設定側も期待していたところと言える。
この「秘密道具による本陣の割り合い」という展開を十分に予測してアイディアを立てたチームが試合を有利に展開する事が出来ただろう。
解説はお馴染み、視聴者とロボコニストから絶大な支持を得る岡山理科大 衣笠教授。なんと11年連続での解説となった。
近年の近畿大会放送では、司会者やリポーターの名前はテロップで表示されるだけなのに、衣笠先生は呼び入れられて登場して司会者に紹介されるところが映るというパターンが恒例になっている。
近畿大会当日は台風21号が近畿地方を直撃。台風バッティングは1998年にもあり、この時は超大型の台風10号が前日に接近したが、当日は見事に晴れた。
しかし今回は当日も風雨が吹き荒れ、交通機関が混乱。明石、奈良、和歌山は学校の応援団がたどり着けず、一般席から学校応援席に観客が誘導される事に。
大会は予定時刻より早くに開始され、進行も超巻き進行。それを汲んでか汲まずか、試合もスピード決着ばかりで巻き進行に貢献。
試合の平均タイムは0:44。最長でも1:18だった。おかげで大会は早く終わり皆早く帰路につく事が出来た。
また試合時間が短いので近畿大会放送ではマシン紹介や試合のスローリプレイなど十分な説明時間が確保され、今年も良編集だと好評だった。
そして大会内容にも台風が吹き荒れた。台風の目になったのはまさかの神戸。
全国ブランク10年、そのうち6年連続2チーム初戦敗退など弱小校の名をほしいままにしていた神戸が2チームとも頭一つ抜けた強さを見せ、Bチームが準優勝、Aチームがベスト4+技術賞+全国枠を獲得。
優勝は奈良が意地を見せたものの、2チームとも初戦突破したのは神戸だけであり、両方ともベスト4以上まで上がったのだから文句なしに今大会で最も活躍したと言っていいだろう。
大会放送でも「今年の神戸市立高専はひと味違う!」「神戸市立高専の2チームの快進撃を誰が予想できたでしょうか!」というナレーションと共に昨年の散々な結果を振り返ったり、
衣笠先生の「ここまで変わるの珍しいですよ。しかも完全に力で勝ってますからね。」というコメントを入れるなど番組編集側もノリノリ。
それだけ番組スタッフが各校の動向をちゃんと見ているという事であり愛を感じる。
エキシビションは恒例の混成チーム対決。衣笠先生が各チームから1台選出し3台1チーム同士で対決。
合計6台で本陣をたこ殴りにするというお祭り感が最高に楽しい。6台もいるので当然1分かからず終了した。
大会結果は、奈良が初の近畿大会連覇を達成し3年連続15回目の全国出場。
近畿大会連覇は2009年「ダンシング・カップル」と2010年「激走!ロボ力車」で和歌山が初めて達成して以来2例目である。3連覇の記録はない。
奈良の近畿大会優勝は6回目で、和歌山の最多7回に後1回と迫った。
舞鶴も推薦で2年連続15回目の全国へ。安定して全国へ進んでいる舞鶴だが、優勝は2003年「鼎」以後無く、実は近畿の中で最も地区優勝から遠ざかっている。
3枠目の神戸は全国は3年ぶり8回目。3年前の地区優勝後また元通りに低迷していたが、今年は近畿大会を席巻した。
一方で、2年連続全国ベスト4と調子の良かった明石は、唯一無二のアイディアを見せたものの全国とはならなかった。
全国常連で2006年から2015年には10年連続全国出場を果たした和歌山は、2年連続で全国ならず。過去の全国ブランクが最大3年の和歌山、来年が正念場となる。
そして大阪は5年、近大は11年、全国大会から遠ざかる事になってしまった。大阪のブランクは同校最長である1992年~1996年の5年ブランクに並ぶもの。
近畿の最長ブランクは去年まで神戸と近大が10年でタイだったが、今年近大が11年に更新してしまった。
必ずしも全国出場だけが成果ではないが、ブランクが長い高専は往々にしてアイディアを形にしきれていない。
それは学生にとって最も残念で悔しい事だろう。
このページに記載している試合結果(得点、タイム)は、VTRや学生からの情報を元に記載しているため、
大会放送やWebで公開された試合動画に表示されている内容とは異なる場合がある。
特に生放送では得点が正確にカウントされていなかったり、風船が全て割れても時計がすぐに止まらないといった事が多々あった。
舞鶴 | A | 鶴THE刀 |
去年に続いて今年もカクザトウ。近畿大会最速勝利タイム17秒を叩き出し、全国大会でも18秒をマークしたスピードマシン。
地区大会無冠だが全国推薦。何かしらの賞があっても良さそうなマシンだったが、ベスト4と最速タイムが十分な実力評価に値するという事だろう。
最近は近畿大会は3賞、特別賞を各チームにまんべんなく振り分けようとしているように見える。
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マシン機構 |
2台のマシンは全く同じ。音叉のように配置した2本の刀を本陣を挟み込むようにして上下動させて風船を割る。
挟むための位置取りが若干シビアだが、一度位置についてしまえばあっという間に風船を左右割ってしまう。勿論本陣を挟んでいなくても割れる。
練習での最速タイムは7秒だったらしい。この素早い攻撃を可能にするのが制御の効いた高速なメカナムホイールの足回り。4秒で相手本陣に到達する。
マシン外装は全面が黒のパネルで覆われておりシンプルだが、小さな人形が乗っているなど可愛げも見せる。
基本的に刀のみで戦うが、紐で繋がった2つのボールのような飛び道具も備えている。
これはマシン側面から発射され、下段の風船を割ったりマキビシのように用いる。
しかし試合で使用されたところは確認されていない。
宝物は3段に積まれた角砂糖。
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成績 |
近畿大会 |
1回戦 | 近大A | Tortoise/Spider | 10-0 (0:17) |
近大Aの動きが遅かったこともあり本陣横に良い位置取りを決め、17秒で風船を割りきった。
17秒は神戸A さるかにんぽうと共に近畿大会最速記録で、大会開催時点では全国最速だった。
地区・全国共に本試合での最速は14秒(地区:大分 マリンビート、全国:奈良 万里一空)
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2回戦 | 明石B | とりおん | 5-0 (0:33) |
2台で相手本陣を攻撃。明石Bは1台が妨害にまわったが、うまくかいくぐり順調に割って33秒本陣全割り。
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準決勝 | 神戸B | 飛超孔 | 0-4 (0:51) |
ここまで2台で攻めてきたが、神戸Bの手裏剣の攻撃力は放置できないと見て1台が防御に。
ところが相手と衝突した際にモータドライバが故障。完全に停止はしなかったが動きが悪化し防御が不十分になってしまう。
神戸Bも1台を防御にまわしたが、こちらは試合開始前からモータドライバが焼けておりまともに動いていなかった。
チャンスではあったが思うように位置取りができず、持ち味のスピード割りが発揮できない間に先に全て割られ敗退。
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受賞 | 全国出場 |
全国大会 |
1回戦 | 鳥羽商船 | 鳥羽G3 | 10-0 (0:18) |
1回戦第1試合に登場。鳥羽は本陣の風船を全て片側に取り付け、巨大なスダレマシンでまとめて防御するというトリッキーな作戦に出た。
しかし鳥羽が自陣防御につくよりも早く相手本陣に達する恐ろしいスピード。
片側には風船が全く無いが、それでも両側から挟み込む位置に取り付いた。
18秒で本陣の風船を全て割り、これから始まる全国大会は地区とはレベルが違うがという事を印象づけた。
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2回戦 | 旭川 | ばすたーちゃん2 | 0-2 (1:00) |
正統派刀マシンには少々分が悪い防御型旭川 ばすたーちゃん2。旭川は移動スピードもかなり速く、舞鶴が本陣に侵入する前に防御柵の展開に成功。
柵の手前から刀で割り進めるが、防御マシンの本体がある付近は接近できず割ることが出来ない。
スピードマシンの舞鶴も旭川の超防御の前に敗退。
舞鶴の1台は旭川の本体と子機を結ぶ紐が足回りに絡まっていたが、旭川の残りの風船はしっかりガードされていたため、やはり決定打は防御力だろう。
マシンの相性が悪かった。
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受賞 | |
奈良 | A | 万里一空 |
近畿大会放送の初めには大賞2連覇を振り返られたり、全国大会のマシン紹介VTRの煽りは「なるか!?3年連続ロボコン大賞!」だったり、
高専名を言う時は必ず「2年連続ロボコン大賞の奈良」と言われるなどかなりプレッシャーをかけられていた。
ところが肝心のマシンはいまいち決め手に欠けると本人達が自覚しており、最近の奈良とは思えないほど弱気な発言が何度も見られた。
それでも基本性能と戦略・操縦は群を抜いており、近畿大会は優勝。全国では各段に強くなり本戦最速タイム14秒を記録。
地力の強さは何一つ揺らいでいない事を証明した。
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マシン機構 |
万里と一空の2台体制。どちらも近距離メインでスピードもパワーもあり、押し合いにはめっぽう強い。更に訓練された操縦と戦略の妙で2年連続近畿大会優勝を遂げた。
近畿大会では斜めになった六角形のような不思議なバンパーをしていたが全国では亀の甲羅のような普通の六角形になった。
2台とも城壁のような装飾を側面にしている。何がモチーフかよく分からないが、忍者の切り絵のような装飾があるのでそれか。
全国仕様では両機ともマシンの風船を上空に逃がす竿が付いた。
メイン武器はヤスリを貼り付けたストローをスポンジのような素材に大量に取り付けた長くしなる鞭。
1振りで広い面積を攻撃できる。
この鞭は近畿大会では1つだったが、全国では2つになって本陣を挟み込むようになった。
飛道具も備えており1度に50本×2セットを放つが近畿大会テストランでは殺傷力は低かった。発射機構や音が2015年の大和に似ている。
全国では1門に削減し、本陣近くで発射して鞭攻撃の補助として用いた。
マシン下部からは下段の風船を割るための刀が伸縮アームで出てくる。
もう1台は半X攻撃機構を搭載。刺又のようなU字アームを2つもち、本陣の1直線上をスライドさせて割る。このスライド機構はABUでベトナムが使っていた方式。
アルミ角パイプに穴を等間隔で開けてラックのようにしている。全国ではスライドがもう1セット加わりX字になった。
機構としてはかなり凝っていたが試合では鞭が優秀すぎて使う機会が殆ど無かった。
宝物は五重塔。かなり造形に凝っている。グラグラ揺れるが、五重塔の構造の定説である、揺れで振動を吸収するというところまで再現したのだとすればとんでもないこだわりだ。
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成績 |
近畿大会 |
1回戦 | 舞鶴B | 不鶴定 | 7-0 (1:03) |
2台とも持ち味のスピードで2台で相手本陣に押し込んだ。相手の舞鶴Bは1台が抜けて奈良A本陣へ。奈良Aも1台ほ防除に戻し、これまた持ち味のパワーで徹底防御。
それ以上相手に割らせず、最後は攻撃機で相手本陣を全て割って勝利。
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2回戦 | 明石A | C:。ミ | 1-0 (1:15) |
防御の釣り竿を持った明石Aが相手。再び2台で押し込み、1台は竿をすり抜け、もう1台は竿を折って本陣裏まで回り込んだ。
妨害竿を折るのはルール上問題なく他地区でも折りまくっていた。
最初はノーガードで攻めていたが、ある程度自陣が割られるとまた防御に1台戻す。素早い転換ができるのもスピードあってこそ。
本人全割りで勝利。
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準決勝 | 神戸A | さるかにんぽう | 1-0 (0:39) |
これまで開幕は2台で攻めていたが、今回の相手は前日テストランで12秒本陣を全て割った神戸A さるかにんぽう。
これはさすがにノーガードで攻めるには危なすぎるので1台は最初から防御。
神戸Aはハチロボとクリロボの2台で本陣を攻め、ハチロボがすり抜け壁ドンされてしまう。
一気に7個割られてしまったが、奈良Aの防御機はなんと相手を2台まとめて押し返すパワーを見せる。
その後神戸Aのクリロボが防御に戻り、両陣でそれぞれ1対1同士の攻防となった。
この時点で本陣の残りは3対3。奈良Aは神戸のハチロボをしっかりガード。
攻めきれないと見た神戸Aは再度2台がかりで攻撃に転じ残り1つまで割られたが、こちらの攻撃機が先に割り切った。
近畿大会前は初戦敗退すら覚悟していたという奈良。優勝したかのように抱き合って喜んでいた。
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決勝 | 神戸B | 飛超孔 | 1-0 (0:38) |
決勝は再びの神戸。こちらも振動手裏剣が強力なので、やはり刺又機を防御にまわす。
2台で攻める神戸Bに対し、奈良Aは攻撃力が高い神戸Bの手裏剣マシンを徹底ガード。
この隙にノーガードの相手本陣を攻め割っていく。手裏剣機にガードを抜けられ残り1つまで迫られるが、最後は連続で割って38秒勝利。
初戦以外は全て自陣の風船を残り1個まで割られており苦しい戦いが続いたが、それでも全て冷静に試合を決めきったのは流石試合巧者。
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受賞 | 優勝 |
全国大会 |
1回戦 | シード |
2回戦 | 呉 | 猪鹿蝶 | 8-0 (0:14) |
全国大会では1回戦シードで2回戦から。丁度生放送の開始直後の試合で呉 猪鹿蝶と対戦。
例によって刺又機は防御に回ったが、もう1台はあっという間に相手本陣に到達し、2本に増えた鞭を振りながら同時に飛道具も発射。飛道具は1つ割った。
鞭の性能と位置取りの操縦スキルは地区大会から遥かに向上しており、全国大会本戦最速14秒で勝利。
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準々決勝 | 石川 | 疾風蟹 | 0-1 (2:04) |
基本性能が高い同士の対決。攻撃機が激しく攻め立て相手本陣を7個割って石川の防御マシンの風船も残り1個まで割るが、接触した際にマシンが半分傾いた状態で膠着。
更にもう1台も絡み合ったためここで一度試合停止して引き剥がし。この時点で本陣残りが奈良6石川3。
再開直後、相手本陣を攻めていた奈良のマシンが倒され、2台に襲われる展開に。このままではジリ貧なので、これまで防御していたマシンがすかさず相手本陣へ。
鞭で素早く割って最後の1個を鞭で擦るも割れない。どうやら風船の空気が抜けていて割れにくくなっていた模様。
擦って割るタイプでは当然なかなか割れず、手こずる間に本陣を全て割られ敗退。
マシンの基本性能とX字アームが評価され全国技術賞。
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受賞 | 技術賞 |
神戸 | A | さるかにんぽう |
マシンスペックだけで見れば神戸高専史上最強の戦闘力を持つマシン(多分2番目は2014年 甲速 [m/s]、3番目は1994年 乳母車)。
全国大会前には優勝候補や大賞候補に挙げる声も1つや2つでなく、相当マークされていた事が伺える。
本陣割りの練習最速は9秒だが、3台のマシンのどの組み合わせでも同程度のタイムを出せるというのだから完成度が尋常ではない。
3台のマシンは、猿蟹合戦に登場するハチ、クリ、カニを模しており、クリロボとカニロボは神戸のかつての全国出場機(2002年 栗太郎、2003年 撃ちま栗、2014年 甲速 [m/s])にあやかっている。
近畿大会前日のテストランでは12秒で本陣の風船を割り切り、デバプラでも紹介されて話題となった。
NHKにも面白いマシンとして認識されていたらしく、全国大会予告の映像にも度々登場した。
全国大会ではまさかの通信不良で1回戦敗退。しかし熊本(熊本) 蜂取蜂蔵と共にエキシビションに出場し大会最速の9秒(試合最速は奈良と大分の14秒)で本陣撃破。
本戦は無念だったが、伝説のエキシビションとして強烈な印象を残した。
全国大会特別賞(田中貴金属)。神戸が全国大会で賞を獲得するのはこれが初めて。
1995年「ドリームタワー」で応援団賞という事になっているが、これはNHKの記録にも出たり出なかったりで非公式に近いもので、
マシンそのものに対する評価でもないので除外。
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マシン機構 |
ハチロボット
高さ2mまで展開するトゲ壁による面攻撃が特徴。針山のように配置された矢状の秘密道具で本陣の風船を瞬殺する。
ハチはハチでもハチの大群。こんなの相手にしたくない。対戦相手にとっては厄介極まりないマシンだっただろう。
奈良は全国前に簡易壁マシンを作って練習していた事を明かしている。
秘密道具である矢はプラスチックパイプの先端にヤスリを貼り付けた物で、3台のマシンで共通で使われている。
壁は2本の釣り竿の間に軽く柔らかい断熱材を渡して構成しており、この断熱材に合計84個の矢が取り付けられている。
矢は押すと引っ込み、離すとゴムの力でまた戻るようになっていて、本陣に当たった時に後ろに逃げる事で破損を防いでいる。
そういうおもちゃあった。ピンアートっていうらしい(調べた)。
またピット待機時も矢は引っ込めて不慮の事故に配慮している。
マシンの風船のうち1つは壁の一番上に取り付けられており、壁と共に上に上がって相手に割られないようになっている。
近畿大会ではクリロボの先端のような個別攻撃用のアームも持っていたが、全国仕様では取り外されて壁に特化した。
クリロボット
またの名を「刺しま栗」。2軸アームの先端に大量に取り付けられた矢で柔軟に戦う。
相手が接近戦に強い時はこいつの出番。
アームの1軸目は歯車伝導、2軸目はリンク機構で揺動する。
アームの先端は、地区大会では2本の刀の周りに矢をつけて刺すように風船を割っていたが、
全国仕様では熊手のような線香花火のような見るからに凶悪な形状になり、1ストロークで本陣の片側の風船を割り切るようになった。
風船を上に逃がす竿も持っており、この先端にも矢がついていて伸ばす時に割れる。
足回りはメカナムで3台共通だが、クリロボのみグリップ力向上のため標準のゴムを自作のシリコンタイヤに付け替えている。
カニロボット
沢山飛ばすヤベーやつ。開幕直後に矢を4発×12連発の48発発射して相手本陣にぶち込む。
矢の飛行は非常に安定しており、同時発射される4発はまるでシューティングゲームのように綺麗に横並びで飛んでいく。
これが12連で面着弾して平均6個割るという全国でも有数の効率厨。
ハチロボの壁と同様、飛び道具であるにも関わらず面攻撃を実現している。
高い精度を実現している1つの要素が矢に取り付けられた3Dプリンタ成形の螺旋状の尾翼。
空気抵抗で矢が回転する事で安定した飛行を実現し精度が劇的に向上した。
近畿大会ではスタートゾーンを出た後前マシン1台分進んでから発射していたが、全国では出たところから発射するよう改良されていた。
飛び道具を飛ばした後は、相手の妨害か追加攻撃がお仕事。
先端に刀の付いた竿が斜め前方に2つ伸びて相手の本陣攻撃を妨害する。
また、鞭のような攻撃用のアームも持っている。えげつない他の攻撃方法と比べるとこいつは驚くほど控えめ。
カニ、ハチ、クリ(+Bチームの孔雀)のキャラクターを描いたパネルが前面に付いているが、これはただの装飾ではない。
攻撃アームを動かすとスライドして発射機構を覆うようになっている。
これはマシン同士の接触で発射機構が破損する事を防ぐためで、実践練習の中から出てきた工夫だ。
宝物は2014年「出前迅速」で近畿大会優勝し全国出場した甲速 [m/s]のミニチュア。
全国大会で通信不良で敗退した母蟹の無念を晴らすためハチ、クリ、カニが戦うというストーリーだ。
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成績 |
近畿大会 |
1回戦 | 大阪B | ✝ザ★幼馴染の弟✝ | 10-0 (0:17) |
ハチロボとカニロボの組み合わせで出陣。カニロボの駆動輪が不調だったようで発射位置につけず相手に接近されてしまった。
仕方なく発射は諦めアームを左右に伸ばして防御体勢に。その間にハチロボが壁で相手本陣を17秒で割って勝利。前試合の舞鶴Aに続き2試合連続で近畿最速タイムを出した。
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2回戦 | 和歌山A | 熊猫道 | 9-0 (0:38) |
相手は近接マシンが強力な和歌山Aなのでハチとクリを準備。相手が飛道具を発射している隙に本陣裏まで回り込み壁ドンに成功。
しかし和歌山Aに2台がかりで押し出されてしまう。しかしなんとか振り切り再度本陣裏への回り込みに成功。
壁攻撃とクリの刺し攻撃でフィニッシュ。
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準決勝 | 奈良A | 万里一空 | 0-1 (0:39) |
この試合の前に神戸Bが決勝進出を決めていたため、試合前のインタビューで「(初の)同校決勝をしたい」と発言。
言ってしまったな?フラグ立てたな?では試合を始めよう。
神戸Aはハチ+クリの組み合わせ。ハチロボが出だしでスタートゾーンの角に引っかかり出遅れたが、防御で待っていた奈良Aの刺又機をうまくすり抜け壁攻撃で7つ破壊。
ノーガードで2台がかりで本陣を攻めるが、奈良Aの防御機に2台まとめて押し返されてしまう。
この時点で奈良Aに本陣をかなり割られていたのでクリロボが防御に戻り、各本陣で1対1の構図。
しかしハチロボだけでは攻めきれないと判断し再び2台攻撃に。その時間ロスもあり、攻撃体勢を作る前に奈良Aに本陣を全て割られ敗退。
試合前に立てたフラグをしっかり回収した。
14年ぶりの近畿大会技術賞と全国推薦。全国枠は準優勝したBチーム 飛超孔とどちらにするかかなり議論があったと思われるが、
飛超孔の手裏剣は単発攻撃なのに対しこちらは近接も遠距離も面攻撃。
壁の面白さと各マシンの完成度、ポテンシャルの高さが評価されたのだろう。
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受賞 | 技術賞、全国出場 |
全国大会 |
1回戦 | 都城 | 割れ!風船PANだ! | 0-4 (0:39) |
ハチロボとカニロボで出場。カニロボは近畿大会では活躍できなかったが、全国大会ではシューティングゲームを披露。
開始直後に6個割って会場のどよめきを誘う。もう1つどよめいたのはハチロボのトラブル。通信が確立できずスタートゾーンから出られない。
都城はハチロボを警戒して1台防御に残っていたが、ハチロボがスタート出来ないのを見ると2台攻撃へ。
このままではジリ貧の神戸、カニロボが相手本陣へ向かい初めての鞭攻撃を見せる。
しかし都城はすかさず1台が戻ってきて防御。それ以上は攻められず、本陣を全て割られ敗退。
デモで壁を披露したが、通信が確立できないため神の手で動かさざるを得なかった。
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エキシビション | 熊本(熊本) | 蜂取 蜂蔵 | 2-0 (0:09) |
飛道具540発に全てをかける熊本。奇しくもハチ対決だ。
カニロボとの飛道具対決を期待されたかもしれないが、出したのはハチロボとクリロボ。
カニロボは既に試合で動きを見せたので、制作側としてはまだ見せられていないハチとクリを選ぶのが順当だろう。
インタビューから間髪入れずに試合が始まったため、ハチロボの操縦者はフィールド外を全力ダッシュ。
そのためスタート直後はふらついた移動になっている。
熊本が全飛道具を同時発射し本陣を8個割って会場が歓声に包まれる中、ハチロボは本陣裏に回り込んで壁攻撃。
クリロボは本陣横につけ上からの1振りで片側の風船を全て破壊。
練習最速に並ぶ9秒で試合を決めたが、熊本を含めあまりに早い試合展開に時計が止めるのが遅れ12秒でようやく停止。
このため生放送では12秒とアナウンスされたが、それって実際のタイムより1.3倍も長いやん。
時計ちょっと止めるの遅れて1.3倍とか色々おかしい。
わずか9秒の中に全てを出し切った神戸と熊本。どちらも本戦1回戦敗退で涙を飲んだが、そうでなければこの組み合わせは実現しなかった。
一度止まってしまった歯車が再び動き出し噛み合ったかのような巡り合わせ。それも含めて伝説のエキシビションとして深く記憶に残るだろう。
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受賞 | 特別賞(田中貴金属) |
神戸 | B | 飛超孔 |
可愛らしい孔雀のモチーフとは裏腹に、ロボット殺戮機の異名をとったえぐいロボット。
とにかくタフで、練習ではAチームのマシンを破壊しまくった。これが実戦的な改良につながり、両チームとも高いレベルに仕上げられたのだろう。
近畿大会決勝で風船1つ差で奈良Aに破れたが、神戸に初の地区大会準優勝をもたらした。神戸はこれまで近畿勢で唯一準優勝が無かった。(優勝は4回あり)
読みはピーコックで孔雀の意味。「飛」「超」「孔」の3台のマシンから成るが、大会に出たのは飛と超の2台のみ。
孔は飛道具+パンタグラフで子機が出てくるタイプだったが没になったらしく、その飛道具は飛に搭載された。
神戸が2チームともベスト4以上に進んだのは1999年「Jump to the Future」以来18年ぶり。
戦績だけ見ればAチームベスト4、Bチーム優勝だった上記の1999年が神戸の地区大会最高戦績だが、
この大会は殆どが判定試合だったので(それでも近畿の他チームに比べれば2台とも出来は良かったが)、内容を考えれば今年が過去最高の戦績と言って間違いないだろう。
アイディア、完成度、強さ、どれも文句なしに2台とも全国レベルの仕上がりだった。
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マシン機構 |
飛
特徴は何と言っても、アームの先端に付けられた丸鋸のような手裏剣。風船に少し触れただけで割ってしまう。
この手裏剣は全面にヤスリが付けられたスポンジの円盤なのだが、これを360度回転させてしまうのはルール違反。
そこで正転反転を繰り返して疑似回転させるというコロンブスの卵的発想でルールをクリアしつつ破壊力を確保した。
イメージは完全にバケットホイールエクスカベータ。
人類史上最大の自走機械バケットホイールエクスカベータ。勝てるイメージが浮かばない。
相手が防御にまわる際にはこちらのマシンがひたすらマークされた。
超
アーム先端にヤスリが付いたU字のパイプで本陣を挟むようにして風船を割る。
アームには刀も角度を変えて付いておりU字パイプと一緒に振り回す。
U字が下段、刀が上段、というように分担して当てる事が出来る。
マシン全体が青色に塗装されており、孔雀の装飾も飛よりこっちの方が豪華。
宝物は孔雀の卵。それだけだとただの卵にしか見えないので、孔雀の羽も刺さっている。
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成績 |
近畿大会 |
1回戦 | 大阪A | #にゃんぽ→ちょう | 9-0 (0:29) |
近畿大会初戦を飾る試合に出場。
最初から2台で相手本陣を激しく攻め29秒で勝利。
え?今年の神戸動いてるやん?しかも29秒!?誰もがそう思ったであろう。
今年の神戸は1回戦の相手は2チームとも大阪だった。
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2回戦 | 和歌山B | 奇襲犬豪 | 8-0 (0:50) |
1回戦に続いて2回戦も2チームとも和歌山が相手。
1台攻撃、1台防御の戦略を選択。攻撃は勿論手裏剣機で、相手の防御を物ともせず落ち着いて順調に割っていく。
U字アームの防御機 超も和歌山Bのマシンを徹底ガードし本陣に近づかせない。
この攻防でマシンが絡まった可能性があるとして試合が中断され確認されたが絡まってはいないと判断され再開。
この時手裏剣は最後の1個の数cm手前まで迫っていた。再開直後に本陣を割り切り勝利。
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準決勝 | 舞鶴A | 鶴THE刀 | 4-0 (0:51) |
相手は強力な舞鶴A。なのに超のモータドライバが焼けていて足回りがまともに動かない。
その超を防御に残し飛が本陣へ突撃。舞鶴Aと接触した際に相手のモータドライバも逝ったらしく、
両者とも防御機の足回りが不調という展開に。攻撃マシンの破壊力勝負を制したのは神戸B。3年ぶりの決勝進出。
飛の操縦者はヘルメットが脱げるほど飛び跳ねて喜んだ。
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決勝 | 奈良A | 万里一空 | 0-1 (0:38) |
同校決勝は実現できなかった神戸。相手は神戸Aを倒してきた前年度覇者の奈良A。
試合前インタビューでは「大暴れしてやろう」の名言も飛び出した。
しかし簡単に暴れされてくれないのが王者奈良。
神戸Bはノーガードで2台で攻めるが奈良Aの刺又機が手裏剣機をマーク。
もう1台のU字機が奮戦して4つ割り、手裏剣機もマークをかいくぐってあっという間に追加で4つ破壊。
自陣の残り5個に対し3個リード。しかし奈良Aも2つ割って1個差に。そしてまた神戸Bが1つ割ってラスト1。
優勝が見えたところで奈良Aが一気に2個割って勝負あり。近畿大会準優勝。
2回戦を終えたあたりで今年の神戸はABどちらか全国推薦確実と言われていた。
こちらが全国でも全くおかしくなかったが推薦結果はAチーム。
地区大会では風船割りの確実性がポイントだったため手裏剣が猛威を振るったが、全国では鞭のように1振りで複数割るタイプがごろごろ居たので、
単体攻撃の手裏剣では厳しかっただろう。
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受賞 | 準優勝 |