近畿大会概要
地区大会が設けられるようになってから2回目の大会。
この年も全国大会への出場枠は3だが、翌年から2に減る事になる。
前年同様、全国出場は優勝、準優勝、アイディア賞の3チームとルールで定められていた。
翌年から推薦制度が始まるので、この方式は今年まで。
アイディア賞=全国推薦だったので、優れたアイディアと言うよりは、全国でも活躍してくれそうなマシンに対して与えられていた印象がある。
(今もそのような場合は往々にしてあるように思うが)
トーナメントのブロック分けも前年と同様だが、今年は奈良、和歌山、神戸のブロックと、舞鶴、明石、大阪のブロックに分けられていた。
今大会の放送より、ABチームが明示されるようになったので、上記のデータにも明記してある。
試合時のゼッケンが今年から地区大会でも採用。(全国では去年から採用済み)
昨年よりは全体的にマシンの完成度が上がり、まともに動く物が増えて大会のテンポも良くなった。
盛り上がる点の取り合いが成立した試合も増えた。
トーナメントに書いてある失格というのは、いずれも接地禁止ゾーンにマシンが触れた事による一発失格。
今にするとかなり厳しいように感じるが、当時はそれが当たり前だった。
(1991年「ホットタワー」も相手の箱を崩したら一発失格負け)
大会結果は、舞鶴が初優勝し初全国へ。
奈良が2年連続準優勝、和歌山が2年連続アイディア賞でいずれも地区大会開始から2年連続の全国となった。
昨年優勝した大阪が再び全国に出場するのは1997年で、いきなり5年間のブランクが空いてしまう。
近畿地区の初優勝を飾ったものの、近畿地区初の低迷期も迎えてしまった。
近畿大会出場マシン
舞鶴A ダンシング・クレーン(優勝)
これまで1勝もできなかった舞鶴初の勝利マシンにして初優勝、初全国マシン。
近畿大会を圧倒的な安定感で勝ち上がった。マシン名は舞鶴をそのまま英語にしたもの。
ベルトコンベアでボールを1つ1つ取り込み、スライド式の橋をかけて10点ゴールに入れる。
機敏な動きでボールを1つ1つついばむ姿はまさにダンシングクレーン。
ベルトコンベアには粘着テープを使用しており、確実な取り込みが可能。
近畿大会では毎回70点以上を得点し優勝。
得点力だけなら和歌山オレンジブリッジが居たが、完成度と安定度の勝利と言えよう。
全国大会では1回戦の対戦相手の苫小牧が開始早々接地禁止ゾーンに入ってしまったため勝利。
2回戦は佐世保 テンポイントシューターに103-121で敗退。
今年も近畿勢の全国成績は2回戦が最高。まだまだ全国のレベルは高かった。
舞鶴B ハイ!チャッタ号
なにやら長いアームがある事だけは分かるのだが、完成が間に合わず動かなかったため、どのようなマシンなのか全く分からなかった。
取材VTRでも「完成していない」「動かない」という事しか言わず、マシンのアイディアに一切触れていないのだからもうどうしようもない。
大会でも文字通り全く動かず、司会者もメンバーも「全く動かない」と繰り返して終わってしまった。
悲しい悔しい結果だが、その分ダンシングクレーンが頑張った。
明石A はこ坊+タコ坊
明石のマシンが名前や装飾やコンセプトにタコを使うのは定番だが、その初出がこれ。
当時はまだ装飾やコンセプトに動物等の何かを用いる事自体、全国的に珍しかった。
マシンはボールの倍程度の大きさしかない小型の「はこ坊」と、橋形の「たこ坊」に分離し、
はこ坊がひたすらボールを回収したこ坊に渡して、たこ坊が橋で10点ゴールに転がし入れる。
ボールははこ坊が備えたベルトコンベアの入り口に受け渡され、渡されたボールは自動でコンベアを上がって橋を下っていく。
全国には似たようなアイディアもあったが、コンセプトとネーミングが合っており、流れ作業も見ていて面白い。
大会では確実に得点を決め準決勝まで勝ち進んだが、橋が展開しきらずボールをゴールに入れられなくなりベスト4。
アイディアと完成度は良かったので、和歌山オレンジブリッジが居なければアイディア賞で全国に行けたかもしれない。
メンバーは取材VTRで「高専に入ったらロボコンをやると決めていた」と述べており、
この頃からロボコンが 高専志望者に大きな影響を与えていた事が分かる。
明石が橋マシンというと明石海峡大橋をコンセプトに使うのも定番だが、明石海峡大橋の開業は1998年なのでこの頃はまだ建設中。
なお明石海峡大橋がかかっているのは明石市ではなく神戸市なので、神戸高専も明石海峡大橋をモチーフにしても良いはずなのだが、
やはりここは明石高専に遠慮して使えないという現実が存在する。多分。
明石B しんいち
長いアームの先端に付いた2つの輪でボールを掴み、10点ゴールに入れるアーム型マシン。
近畿大会では唯一のアーム型。アームは伸縮させず、旋回させてボールを掴んでゴールに入れる模様。
大会ではマシントラブルで殆ど動かず敗退。
奈良A OB Maker(準優勝、全国出場)
名前の割りに非常に高い精度でボールを10点ゴールに入れる事ができる打ち出し型マシン。
打ち出しアームは先端の重いゴルフクラブのような形で、上に振り上げた後その自重でボールを打ち出す。
ボールにはバックスピンが少しかかり、1バウンドして10点ゴールに入る。
マシン全体はピラミッドのような形をしており、その頂点に打ち出しアームの支点がある。
打ち出し型のマシンは打ち出し部がマシンの左右どちらかにある事が多く、
その場合打ち出した反動でマシンがヨー軸でぶれやすいが、このマシンは中心に支点があるため安定している。
この年は橋型が強く打ち出し型はどこも苦戦したが、このマシンは面白いように得点を決めて決勝まで勝ち進んだ。
決勝では舞鶴 ダンシングクレーンと接戦になるが、接地禁止ゾーンに侵入してしまい失格で準優勝。
全国1回戦では橋形の新居浜のマシンに72-160で敗退。
Star Kingまで後2年。この全国大会への出場経験がメンバーを更に成長させただろう。
奈良B 飛ばしマシーンDX
小型の機体に竹弓による打ち出し機構を備えたマシン。バリスタのような形をしている。
ボールを1つずつすくって取り込み、弓で打ち出して1バウンドで10点ゴールに入れる。
大会では1回戦を勝利し調子を上げ、1回戦では更に多くの得点を決めたが、相手の和歌山 オレンジブリッジが110点を決めたため敗退。
和歌山A 和歌山オレンジブリッジ(アイディア賞、全国出場)
去年2チームとも抱え込み型だった和歌山は、今年も2台とも橋形マシン。
こちらは16個のボールを全て取り込み、リフトで持ち上げて橋で10点ゴールに入れる。
ボールを4×4の配列のまま取り込み、それぞれの列に送り出し用のローラーを備えている。
1回戦シードで2回戦から登場し、今年も近畿大会最高の110点を記録。
優勝候補と思われたが、今年も準決勝で敗退。
縦にした橋を下ろして展開する時に水平で止まらず接地禁止ゾーンに触れてしまった。
最高得点を評価されアイディア賞で全国大会に進出。
全国1回戦で似たような石川の橋形マシンにあたり130-131で敗退。
和歌山B 和歌山WINS
去年に続きABチームとも似たような名前似たようなマシン。Aチームと同じ橋型。
5又のフォークリフトでボール4個をすくいとり、橋で10点ゴールまで転がして入れる。
内部に取り込めるのは4個。フォークリフトと合わせて8個までなのがオレンジブリッジとの大きな違い。
大会初戦に登場し奈良 OB Makerと接戦を繰り広げるが、ボールを2個同時に橋に転がしてしまい、
橋が下にたわんだため10点ゴールにボールが入らず、そのままボールが先端に詰まって接地禁止ゾーンに倒れ込んだ。
実力を発揮しきれず悔しい失格負け。
大阪A 吉丈号
オムニホイールを備えた橋形マシン。オムニ搭載機としてはかなり初期のマシンになるのではないだろうか。
機体のフレームには発泡スチロールが使われている。
ボールを全て囲って移動させ、スロープ状になった機体に沿って持ち上げ、スライドする橋を伸ばして10点ゴールを狙う。
取材VTRではスロープが扇形になっていたが、うまく持ち上げられなかったため平行なスロープに変更している。
制御にマイコンを使用して駆動輪もPWM駆動しているが、機動力を発揮出来ず得点できないまま初戦敗退。
大阪B 藍染5号
1年生12人チームが各部に「こうしたら面白い」を詰め込んだマシン。
橋形だが橋にはビニールシートを使っており、接地禁止ゾーンの対岸に子機を回り込ませて10点ゴールの上を通るシートの橋を展開する。
シートには穴が空いていて、10点ゴールにボールを入れる事が出来る。
橋までボールを持ち上げる機構もユニーク。巨大なショベルが縦に回転しボールを橋まで持ち上げる。
はずだったのだが大会当日にはゴンドラリフト式に変更されていた。
大会ではシートの展開がうまくいかず、舞鶴 ダンシングクレーンとの初戦、テープ対シート対決に敗北。
しかし、試合後に披露したシートの橋のアイディアを見た子供の表情が、その面白さをはっきり伝えていた。
神戸A 名ストライカー神!!
なんとも形容しがたい、橋形と打ち出し型とアーム型の中間のようなマシン。
振り子のように吊された長いアームの先でボールを1個すくいあげ、
10点ゴールの近くまでアームを上げてボールを落とし1バウンドで入れる。
確実に入るがとても非効率的。こんなマシンが出てくるのもオールドロボコンならでは。
1回戦で奈良 飛ばしマシーンDXと対戦し、接戦の末敗退。
全国大会放送では導入部でアイディアの多様さを紹介する部分でVTRのみ登場。
神戸B 命がけのスローインロボ
変なマシンオブザイヤー。1点しか狙わない。ついでに名前も変。でも形は面白い。とにかくアイディア勝負。
マシン全体が大きな扇形のフレームになっている。
ボールを1個すくいあげ、そのまま扇形のフレームを伝って持ち上げ、マシンごと倒れ込んでボールを1点ゴールに投げ込む。
投げ込むというか転がす。作ったのは化学科の学生。
大会では1回戦シードで登場。1度ボールを投げ込んだが1点ゴールには入らなかった。その後はボールの取り込みに手間取り敗退。
こんなマシンが出てくるのもオールドロボコンならでは。(2回目)
今年の神戸は両チームともかなり変だった。しかし、ロボコンとは閃きを形にして魅せる場でもある。
それは小学生だった私にも確かに伝わった。
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